道端で立ち小便をする男が昔はいて、子供の頃によく見かけたものだ。
今なら顰蹙(ひんしゅく)を買うが、その頃(数十年前)は別段嫌な思いはしなかった。子供ゆえに善悪の判断は学習中であり、自力でつけることはできなかった。
さて、その時代の(道端の)簡易トイレには、鳥居の絵がペンキなどで描かれていた。物事の判断が少しできるようになってから「ああ、ここは汚い場所だな」と遠ざかるようになった。
最近の記憶では、数年前の夜、酔っ払いが暗がりで用を足しているのを見かけた。酔ってぐでんぐでんだったが、さすがに遠慮がちに隅っこの適当な場所を探して「ここなら誰も見ていない」と判断して実行に移したようだった。
だが、今ではもう、そんな姿すら見かけなくなった。ケースバイケースでいろいろあるかも知れないが、基本的に日本では、タチションという行為は消滅したように思う。
その国やその地域に住む人々の知的水準、教育水準、文化水準、行動様式などの成熟度を表す「民度」という言葉があるが、それは時間の経過と共に高まっていくものである。
鳥居の絵がタチション防止に役立ったかどうかは不明だ。神社のシンボルである鳥居にオシッコをかけると「神様のバチが当たる」からということだが、どのくらいの効果があったかはわからない。
だが、もしかするとその鳥居の絵が抑止力になっていたかも知れないという気がする話があった。それは「タチション」と変わらない民度の低い行為にゴミの不法投棄のことだ。
長野県茅野市で、不法投棄に悩む土地の所有者が国道沿いの茂みに小型のスフィンクス像を置いた。すると効果は抜群で不法投棄が激減した。所有者は「神様の前で物は捨てられないのでは」とみているという。
この場所は昔、畑だったが、耕作をやめると10年ほど前から不法投棄が始まった。定期的に回収してきたが生ごみにタイヤ、家電製品など様々なものが捨てられていた。所有者は、不法投棄が多い場所に小型の鳥居を置くと投棄が減ったという話を参考にしたという。
神様もスフィンクスも人間を超越した存在だから、その目の前で非道徳的な行為をすることに、人はだれしも不安を覚える。人の心の奥底に眠っている良心が目覚めるのかも知れない。
眠っている良心を常に、いやそれが無理なら時々でもいいから、目覚めさせてやるように自分を躾けることが「人の道」ではないだろうか。
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