その昔、うっかりキーボードを押してコンピューターを再起動させてしまうことを防ぐため、初期のIBMコンピュータを設計したエンジニア、デービッド・ブラッドリー氏はログインのためには両手を使う必要があると考えた。
そこで思いついたのが、片手ではけっして届かない距離にあるキーを同時に押すという方法。それがCtrl+Alt+Deleteであった。
WINDOWSパソコンのキーボードの左下にある「Ctrl」(コントロールキー)と、その2つ右にある「Alt」(オルタネートキー)を左指で同時に押しながら、そこからはずっと右にある「Delete」(デリートキー)を右指で押す。
米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は、この3つのキーを同時に押してコンピュータにログオンする方式は失敗だったと認めた。
ゲイツ氏は9月21日、米ハーバード大学の寄付集めキャンペーン開始の式典に出席した際の質疑応答で、聴衆からの質問に答えて「ボタン1つにすることも可能だった。しかしIBMのキーボードを設計した人物が、ボタン1つにしたがらなかった」と打ち明けた。
当時マイクロソフトは、大型コンピュータで世界的な勢力を誇ったIBMがパソコンビジネスへの参入を決めるにあたり、マイクロソフトが開発したOSを採用してもらって手を組んでやろうとしていた頃だ。(それがPC-DOSとなる)
まだ零細企業だったマイクロソフトが天下のIBMにOS(基本ソフト)提供するというニュースに世界は驚いたが、この時に、マイクロソフトはPC-DOSを自社単独でも販売することでIBMの了承を取り付けていた。
そしてこれが、マイクロソフトの現在の大成功と隆盛につながるのである。PC-DOSをほぼそのまま、MS-DOS(マイクロソフト・ディスク・オペレーティングシステム)として売り出した。
現在、世界で最も多く使われているパソコンOS「WINDOWS」の先祖がこのMS-DOSである。
この事件以来、パソコン販売で先行していたスティーブ・ジョブズ氏率いるアップルコンピュータはマイクロソフトの戦略の前に、一気にシェアを奪われていく。
話を戻すと、WINDOWSパソコンは今でもCtrl+Alt+Deleteの組み合わせが生きており、最新の「WINDOWS 8」でもコンピュータをロックしたりコントロールパネルにアクセスする手段として使われている。
この3つのキーの組み合わせは基本的なセキュリティ対策を意図したものだったとゲイツ氏は説明し「そこで我々は、低レベルのプログラミングをして、あなた方に強制した。あれは失敗だった」と両手を挙げて見せ、聴衆の笑いと拍手を誘った。
一方、元IBMのブラッドリー氏は2011年の講演で「自分のやったことがこれほど象徴化されるとは思わなかった。発明したのは私だが、有名にしたのはビル(ゲイツ氏)だと思う」と述べている。
マイクロソフトにパソコンのシェアを奪われたアップルコンピュータは業績が低迷して経営危機に陥っていく。だが、その十数年後に、パソコンの次の地位を狙うモバイル情報機器を前面に出して業界に旋風を起こすことになる。
最後まで「勝ち負け」はわからないものだ。
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