分身の術が使えるものなら使いたい。
ドラえもんの「どこでもドア」が目の前に現れたらどんなに好いか?
一人で介護を経験した者なら誰しも同じような気持ちを抱いたことがあるはずだ。
先月末から高齢の母の体調が悪い。
腹痛から始まり、風邪の症状に。通院3週間。点滴を始めて2週間以上経っても、なかなか快復が見られなかった。
軽い認知症はあったが、幻覚症状(医学的には「幻視」と呼ぶそう)が顔を出してきた。
昼夜を問わず、常に喋っている。誰か見えているようだ。
突然話しかけて、「さあ、お上がりください。」と言ったかと思うと、「ありがとうございます」などと普通に会話している。
終いには「お客さん見えてるのに、何してるの」と私を叱る。
その他はほとんど創作の世界。所謂「作話」で、よどみなくなく生まれてくるお話の数々がどうやって頭の中から出てくるのか?覗いてみたいと思うほど内容は巧みだ。話にオチもある。
点滴のために病院のベッドで横たわっている時間は3時間半以上、時には4時間に及ぶことも。
その間、天井に向かって、「ほらほらちびさん達も来たよ。」などと私に話しかけてくる。
北海道は大半が8月盆だが、函館は7月のお盆である。
つい、お盆だから本当に来ているのかも?と思ってしまった。
手足も常に動かしている。夜など突如寝床から半身を起こして、何かをつかもうとする仕草を始めたり、急にブツブツ怒り出して拳骨のグーが横に寝ている私に飛んできたりするので堪らない。
本人もこれだけ動いて喋っていたらさぞかし体力を消耗しているのだろう。
第一眠っていないのだから。
かかりつけ医には当初、薬を使うとそのまま眠ってしまって目覚めないかもしれないと言われたが、とうとう一番軽いタイプの睡眠導入剤を服用させることになった。お陰で3時間ぐらいは熟睡してくれるようになり、私も少し眠れるようになった。
病院が14日からお盆休みを兼ねた夏休みに入ったので、その間は訪問看護で点滴を受けていた。
風邪の症状は和らいでいる。幻視も少なくなり、絶えず動いて喋っていたのが徐々に落ち着いてきた。
と同時に元気がない。お腹の調子も相変わらずゆるい。
眠れない時は辛かったが、静かになればなったで心配事が増える。
今まで幾度となく生命の危機を乗り越えてきた。
心不全であちらへ行きかけたこともある。
それでも戻ってきてくれた。生命力のある人なのだ。
もう一度復活してくれることを願っている。
長く営業している近所の美容室に『長寿心得』なるものが貼ってあり、高齢化しているお客様を励ましている。
90歳で迎えが来たら「そんなに急かすなそのうちに」と言いなさい。
100歳にして迎えに来たら「頃合をみてこちらから行く」と言いなさい。
母は9月で満95歳になる。こちらから行くにはまだ早かろう。
今函館は母の大好物の「真イカ」の季節。
「イカ刺しで一杯やろうよ。早く元気にならないとね。」と話しかけると、しっかり目を開けて嬉しそうに頷いた。
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乗客のコメント
イカ刺しをはやくお召し上がりになれますように祈っております
田園豆腐 大阪府(53)男性 2013/07/20
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